私は短大を卒業後、生命保険会社に一般職として入社した。
ある地方都市の支社に配属されたのだが、入社当時から先輩や上司から聞かされていた「伝説の人物」がいた。
そのお方とは、「新井正明」
あらい まさあき、1912年〈大正元年〉12月1日 – 2003年〈平成15年〉11月27日)は、日本の実業家。
住友生命保険社長・会長、松下政経塾理事長、関西師友協会会長を歴任。
10年以上社長として手腕を振るい、 その後、名誉会長となっていた人物。
私が入社した当時は、日本経済新聞の「私の履歴書」というコーナーで、彼の半生が連載されていた。
新井正明氏は東京帝国大学卒業後、住友本社に入社し、その後、住友生命に配属される。
その間に日中戦争が勃発し、招集されることとなる。
ノモンハン事件に巻き込まれ、片足を失う。
社員なら誰もが当たり前のように知っている人物。
当時、八十代前半。
そんな新井名誉会長が、なんと私が働いている支社を訪れるというニュースが!
私は朝から緊張した。
確か、午前11時ぐらいに新井名誉会長は到着予定。
私の席は出入り口の目の前なので、ラッキーなことに、名誉会長を間近で見ることができるチャンス!
新入社員でぺーぺーの私は、 宅急便の応対をしなくてはならない、出入り口付近に座っていたのだが、こういう時は嬉しい😆
ついにその方は現れた。
新井名誉会長が会社に入ってきた瞬間に時間が止まった。
普段はお客様への電話応対をしたり、書類を整理したりと忙しいのだが、 その時ばかりは誰もがみな手を止めた。
社員全員が自然と立ち上がり、頭を下げた。
上司に強制されたわけではない。
敬礼したくなってしまう「何か」があった。
彼の周りには、ものすごいオーラが漂っていた。
私はオーラが見えたりするタイプの人間ではないけれど、 彼の背後にある空気が明らかに光っていた。
真っ白な髪の会長は、 義足をつけていたのだろう。
足を引きずりながら、私たちの目の前を通り過ぎていった。
す、すごいね…。
会長が通り過ぎた後、同僚と交わした言葉はそれだけ。
圧倒された瞬間だった。
新井正明氏はノモンハン事件で片足を失った後、 ハンディキャップを持ちながらも人の2倍も3倍も努力を続け、 二流だった会社を一流へと押し上げた。
そんなすごい人物なのに、私が目の前で見た彼は、まるで少年のように目がキラキラとしていた。
えらいサラリーマンによくあるようなギラギラ感や威圧感は全くなかった。
名誉会長が去った後、心が洗われたような気がしたのはなぜだろう?
その後、2003年に肺炎のためご逝去された。
あんなにオーラがすごい人は、未だかつて見たことがない。
出典:wikipedia